心の旅
人が不可能と思う時、やりたくないと決めているのだ(スピノザ)
後輩の角福くんが帰って来た。
角福くんはちょっと自分探しの旅に出ていた。
旅立つ前(と知らずに話しかけたのだが)、彼が言っていたことを私は覚えている。
私が「元気か?」と聴くと、
「体は・・・」
と小さく言ったのだ。
(心は・・・!?)
と私が思ったのもつかの間、間もなくして彼は旅に出た。
そして、突然彼は帰って来た。彼は私のところにわざわざ挨拶に来てくれた。
私は極めて気さくに、いつも通りに「お、久しぶり!」と声をかけた。「復帰してどうだい?」と聴くと、彼は苦しそうな声で
「苦しいです」
と言った。
しかも、喉元に手をあてて・・・。
まだ自分探ししきれてなかったか・・・。なにせ「元気か?」「体は・・・」の会話があっての「苦しいです」だ。心が疲れてしまったときは優しく見守るに限る。私も心を病みかけてしまったとき、故郷の景色、両親からの愛情、そして友情や絆にそっと見守られ、なんとか立ち直ることができた。私自身の経験則から行って、叱咤激励はかえって逆効果なのだ。
「まぁ、久しぶりの外来だ。無理せずにゆっくり慣らしていけばいいよ。」
私は優しく言った。
・・・すると、彼は言った。
「は、白衣が・・・きつくって」
彼曰く、復帰するにあたって、うっかり痩せていた頃の白衣を持ってきてしまったがために、パツパツで苦しいのだという。しかも、ケーシー型白衣だから、首が絞めつけられるような形になっていた。
(※イメージ)
なんだ、心配しすぎたか。よかったよかった。
そうだな、角福君、もう大丈夫そうだ。
「ボタンはずしなよ」と言っても、決してボタンを外さないところに、彼の決意を感じたような気がした。
それでは、ばいちゃ☆