俺はタクランケ!X

ハロー、ハロー聞こえますか?
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あなたの世界とちょっとよく似たこっちの世界。
そっちがこっちで、こっちがそっちのパラレルワールド。
平行と交錯、現実と虚構。
ここは、それらの混沌から滴り落ちた、雨粒のようなブログ。
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2016.11.30 Wednesday

リフレインが叫んでいる(特定共同指導に向けて)

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     ここ最近、雪大病院歯科診療センターは明日に控える「特定共同指導」に向けて緊張感が高まっていた。

     

     私達、一年目の研修医にとっては「とくてーきょーどーしどー?」とわけわからんちんの状態だったが、連日いろんな先生がいろんな話をしてくださるので、なんとなく概要はつかめてきた。どうも「特定共同指導」とは、数年に一度厚生労働省の地方厚生局から技官と呼ばれる人たちが「あなたの病院ではきちんと国の決まり(保険制度)に乗っ取って診療できていますか?」とチェックしにくるというイベントらしい。雪大は7年ぶりの指導らしい。

     まず事前に50症例がランダムに厚生局の方から指定される。そして指導当日に、担当医と技官による質疑応答が行われ、それぞれの症例のカルテ、エックス線写真や模型などの資料、技工指示書などの書類などをビシっと調べあげられる。そこに医療行為の正当性が疑われる記載や保険のルールに照らし合わせた際の矛盾、過不足が見つけられると厳しい指導が下り、いくらいくらを国に返還しなさいという指示がなされる・・・らしい。

     保険制度というのは、ざっくり言うと、よくテレビとかで「3割負担」とか言われているやつで、皆さんが病院に行って保険証を提示すると実際にかかった医療費の3割分を患者さんが払って、残りの7割を国が払ってくれるというシステムだ。だから、指導が入って「これは保険制度のルール上問題がある」となると、国のお金が絡む問題となって、指導を受けた病院は幾分かのお金を国に帰さなければならないということになる。そのお金が尋常でない額で、病院によっては数億、ここ数年歯科の大学病院においては数千万円の返還を支持されているらしい。ということで、病院側からすれば指導を受けると数千万円のダメージということになりかねないため、しっかりと準備をして指導を円滑に受けて、技官からの印象を良くして、医療行為の妥当性を認めてもらいながら返還額をできるだけ少なくすむようにしたいわけである。

     

     ここ数日、先生方は口を開けば「指導」「指導」と、指導の話しでもちきりだった。指導の対象となる症例が発表されるたびに「誰が当たった?」と診療室がざわめきだった。あっちでもこっちでも指導、指導。私はここが中村獅童のファンクラブだったらどれだけ平和だったろうかと思った。

     指導、獅童、指導、獅童。

     

     ただ、指導の対象となる症例は、保険点数が平均よりも高いものや、雪大病院の特色が反映されているものが積極的に当たりやすくなっている傾向らしく、症例数もそんなに無い、点数も平均以下であり、スタンダードな治療しか行っていない研修医は殆どあたることなどなかった。医局の先生からは「君たちも保険医なのだから、今回の指導で、どのようにカルテ記載を行えばいいのか非常に勉強になるから、しっかりとメモを取りながら聴いておくように」と指示された。先輩からは「若手がしっかりとメモとか取りながら一生懸命、技官の話しを聴いている姿は心象が良くなるらしい」という話も聞いた。

     

     私達研修医は少しでも技官からの病院の印象が良くなるように、普段通りのきちんとした立ち振る舞いを徹底して行うように促された。あっちでもこっちでも心象、心象。「ここが少し普段より汚れてしまっているから、しっかりと掃除しておかないと、技官からも心象が悪い」。先生も同期も心象、心象。ここが落語ファンのお茶会だったらどれだけ平和だっただろうか。

     心象、志ん朝、心象、志ん朝。嗚呼、しんしょう。

     

     ということで、研修医にとっても落ち着かない日々を過ごしていた。

     

     その一方で、私達1補綴の研修医は今週末に控えた医局旅行でやる芸出しの準備にも奔走していた。診療が終わり、指導の準備を終えた私たちは、研修医控室に戻って夜遅くまで芸出しの準備。「色んな準備で全ての技工がストップしている・・・」と愚痴だか何だかわからない状況説明を時々口にしながら「何が面白いんだろう・・・」と、どんどん哲学的な境地へ陥っていく。

     上の先生たちが指導に頭を悩ませている中、私たちは芸出しに頭を悩ませているのかと思おうと、その温度差にまた面白くなってきてしまったり。

     

     「そうだな、夕飯でも食べながらネタを考えようぜ」とクラッチ。コジマカーが発進。3人で近所のスープカレー屋に向かった。

     3人でカレーを啜りながら、いろんな話しをした。

     

     「芸出し、あのネタどうしようか・・・」「案外練習する時間ないよね」「明日からの特定共同指導ってどんな雰囲気なんだろうか」「そのワードでググると色んなブログでてくるけど、人によっては半沢直樹みたいとかって書いてあったよ」「そういえば、おそ松は医局旅行来れないのかな?」「複合先が厳しくて有給とれないのかな」「そうかぁ、あと4ヶ月で研修も終わりかぁ」「なんだか寂しいな・・・」

     

     私は滝のように汗をかいた。隣に座っていたコジマ君も汗だくで、クラッチが「2人とも汗すごない?」と言った。私は風邪をひかないように、しっかりと紙ナプキンで汗をぬぐって、カレー臭くなった服をまとって、再びコジマカーに乗り込んだ。

     

     落ち付かないウィークエンドがはじまりそうである。

     

     

     

     それでは、ばいちゃ☆

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