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2018.12.11 Tuesday

「坪根式バイトゲージの特徴と使用法について」を読んで

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     研修医のときに、症例発表会に備えて読んだ論文のひとつを、勝手に抄読してみようと思う。

    tubone1.JPG

     「坪根式バイトゲージの特徴と使用法について」。1980年に九州歯学会誌に掲載された論文のようだ。義歯をつくるにあたって咬合採得について調べていたら、ネットに落ちていて、たまたま見つけた。

     今やバイトゲージの代名詞ともなっている「坪根式バイトゲージ」は九州歯科大学名誉教授であらせられた故坪根政治先生が開発されたもので、日本中の歯科医師が日常的に使っている義歯製作にかかせないツールのひとつである。卒業生としては母校の発明品が全国で用いられているというのは、なんとも誇らしいものがある。この論文ではその「坪根式バイトゲージ」の有効性について分析されている。

     

     「坪根式」というくらいなのだから、きっと他にもいろいろなバイトゲージがあるんだろう・・・と思っていたが、この論文には「坪根式」にいたるまでのバイトゲージの歴史が冒頭でつづられていた。

     緒言にて、咬合採得は「総義歯製作において最も困難なステップのひとつである」と書かれ、特に「垂直的顎関係(咬合の高さ)」については「審美的要素などと密接な関係があるにもかかわらず、その確固たる方法がなく、術者の知識や経験に負うところが大である。」としている。

     顎間関係については様々な計測方法を併用して総合的に決定するのが望ましいとしながら「垂直的な高さを計測する手段が必要であり、数値として表示されることが望ましい」と、バイトゲージの有効性について論じられている。

     

     「バイトゲージとしては古くはWillis.F.M.(1930)のバイトゲージ」と古いバイトゲージが紹介されていたが、この論文で初めて見た。

    tubone2.JPG

     お馴染みのWillis法を測定するためのバイトゲージ。ただ、この論文によると口唇が妨げとなり正確な測定が困難とのこと。

     

     また、Bruno法を測定するためのBrunoのバイトゲージも載っていた。

    tubone3.JPG

     これも口唇が妨げになっちゃうらしい。坪根式はこれらの欠点を上手く補っているんだって。

    tubone4.JPG

     そして伝家の宝刀、坪根式バイトゲージ。論文では「1号機」を造り、その反省点を生かして改良されたのが、現行の「坪根式バイトゲージ」なのだという苦心談も綴られていたが割愛。なるほど、いま私たちが使っている「坪根式バイトゲージ」は2号機なのね。

     

     Willis法ではかるためにWillisのバイトゲージ。Bruno法ではかるためにBrunoのバイトゲージ。じゃあ、坪根式バイトゲージは何法ではかるための・・・?

     そりゃもちろん、

    tubone8.1.JPG

     坪根法だろう。

     

     「坪根法」による咬合採得の方法は、きちんと教科書に載っている。ここでいう教科書というのは、今、全国の歯学生が最も使っているとされている医歯薬出版の「無歯顎補綴治療学」だ。そこにもしっかり載っている。国試はその教科書から出ると言われているから、坪根法が出たって文句いえないわけよ。でないけどね。

     

     坪根法はWillis法に加えて左手の人差し指を測定する。なんでそこを測ることになったのか、すごい興味があるんだけど、確かに自分の人差し指を口元にあててみると、確かにほぼ同じだったりするから、すごい。オトガイ点が軟組織だから、人差し指を測ろうということなんだろうか。誰か教えて。

    tubone5.JPG

     坪根式バイトゲージを用いて左手の人差し指を測るのには、こうすればいいのか。なるほど。

     

     さっきもちょっと言ったんだけど、オトガイ点が軟組織だから、なかなか画一的に測定値を出すのは難しい。この論文ではそういうところも考察されている。

    「圧接状態による差異、測定者による差異さらに個々の測定者の計測値のバラつきなどを検討するために、測定者5名(補綴学教室在籍2年以上)が正常有歯顎者5名を被検者とし、鼻下点-オトガイ底間距離を測定した」

     その結果がこちら。

    tubone6.JPG

     これから「同一被検者に対する各測定者の計測には有意の差があるが、同一測定者間の此処の値についてみるとバラつきが小さいことがわかった。」としている。結構差があるようにも思えるけど・・・。

     「ゆえに、測定者は圧接の程度を可及的に同じ状態にし計測する必要があり、またこうすることにより顔面計測法もかなり信頼性のある計測手段となりうることがわかった。」

     暗に差が出やすいってことを言っているような気もするけど、気にしない。複数回計測して平均を出すのがいいんだね。それは「まとめ」でも言及されていた。先に言っちゃった。

     

     さらに「坪根式バイトゲージ」の分析は深まる。今度は以下のポイントの計測をして、Willis法、Bruno法、坪根法は実際にどうなのかを平均を出していた。

     以下のポイントというのが、こちら。

    tubone7.JPG

     さて、この計測では誰がnになっているのだろうか。それが、こちら。

    tubone8.JPG

     少ないし、手近。

     

     実際に患者を測定すればもっとn数が稼げたような気がするんだけど、まぁ、気にしない。

    tubone7.1.JPG

     この測定値からは、Willis法と坪根法は大体いい感じだけど、Bruno法は男子だと差が14.3mm、女子は7.6mmと結構大きいぞ・・・ということが細かく書かれている。

     

     

     

     以上のことから「坪根式バイトゲージ」は次のような有用性が示されたとしている。

    tubone9.JPG

     やっぱり5)日本人顔貌に適合しやすいこと.というのが一番ぐっとくるかな。

     

     

     

     要するにこの論文を読んでわかったことを、自分なりにまとめると次のようになる。

    ・Willis法、坪根法は使えるけど、Bruno法は微妙。

    ・できるだけ同じように何回も測ってその平均を出すのが正しい使い方。

     

     今後も、こういった怪しい(!)和文論文を読んで、出来る範囲でブログの方に紹介していきたいと思う。

     

     

     

     それでは、ばいちゃ☆

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