座して待った話(そういう意味?)
病院から医局へ戻る長い廊下で、何人もの6年生に会った。
「先生!受かりました!」
そういえば、今日は歯科医師国家試験の合格発表の日だった。そうか、皆、御礼参りに来ていたのか。
悲喜こもごもの合格発表。色んな人からメールやLINEでも報告があり、母校の後輩のことはもちろんのこと、雪大の学生さんたちのことも自分のことのように嬉しく思った。
「おめでとう!やったな!」
私は素直にそう思った。
こうして学生さんたちの喜ぶ姿を見ていると、自分のときのことを思い出す。私が6年生だった時、どうだっただろう。
九州修羅大学は歯科単科大学なので、卒業式や謝恩会の日程を、厚労省の国試合格発表の日の前日にする慣例がある。大体毎年そうらしい。だから、卒業式に出て、そのまま謝恩会に出て、二次会、三次会と朝まで飲みに飲んで、ちょっと寝て、起きたら合格発表の時間・・・というタイムテーブル(?)だった奴が多かったんじゃないかな。
九修大生は酒の残り香と共に合格発表を見るのだった。
酒で緊張をごまかそうとしたけれども、緊張しすぎて全然酔えなかった。
飲みに飲んで、発表の時間くらいに起きて、起き掛けに結果を見ようとしたけれど、健康的な時間に起きてしまったために、ただただ酒の気怠さを携えて何時間も緊張と不安でヤキモキした。
・・・などと言った体験談も毎年のように語られる。それが、九州修羅大学。
さて、私はというと、朝までコース。多数派の中に紛れ込んでいた。
飲んで、歌って、朝を迎えて・・・。あんまり覚えていないけれど、昼くらいに起きたんだったと思う。時計を見ながら「あと2時間後か・・・」と思ったことはしっかりと覚えている。そうそう、合格発表は午後二時からだった。
本当は厚生局まで言って、掲示板に貼り出される番号を直に見たかったんだけれども、そのためには福岡市まで行かなければいけなかった。北九州市と福岡市はちょっと遠い。高速バスで1時間ちょっとだ。中にはわざわざ見に行った人たちもいたらしいけれども、こんな緊張状態で電車やバスには乗れないと判断した私は座して待つことにした。
合格発表の数分前のことであった。
私は猛烈な便意に襲われた。もしかすると極度の緊張とストレスからくる過敏性腸症候群だったかもしれない。いや、飲み過ぎか。ああ、飲み過ぎだったわ。
私は自らが合格発表を目前に控えている身だというのも忘れて、自分自身と戦っていた。
そして、
スッキリ!
・・・したところで、私は急に思い出した。
げ!スッキリしてる場合じゃねぇじゃん!
時計を見ると、ちょうど2時。
私は便座に座りながら、スマホを取り出し、すぐに厚労省のホームページにアクセス。トップ画面の新着情報を見た。2時なのに、発表はまだだった。そういえば先輩たちからの話によると、アクセスが集中するため、ネット上での合格発表は遅れるのだという。「更新」ボタンを連打して、やっと出てきたらしい。
私はそんな話を聴いていたもんだから、こりゃ連打地獄か?と腹を決めて、高橋名人よろしく連打を開始しようとした。そのときである!更新ボタンを一回押しただけで、新着情報の欄に「国家試験合格発表(速報)」の文字が。
急に出てきてびっくりした。スゴイカタイ壁だと思って、全力疾走で助走をつけてぶつかったら、すごい柔らかい壁で突き抜けて転んでしまうような。それくらいの肩すかし感はあった。
でも、出たものは仕方がない。それを押して、歯科医師国家試験の「合格発表(速報)」へアクセス。一度も停まることなく、スムースに次のページへと次のページへと進んだ。そして、「福岡県」の欄を選んで、クリック。すると、ずらーっと番号が並んでいた。私はゆっくりとそれを見渡した。
なんと、そこには無事に自分の番号があった。そのときの様子を三方向からご覧あれ!(※注:イメージ)
(1カメ)
あ!あった!!
(2カメ)
あ、あった!
(3カメ)
あ、あった!
スッキリ!
私は自分の合格を見て、それからゆっくりケツを拭き、トイレを流した。そして、部屋の壁に貼ってあった受験票を見て、本当に合格発表にあった番号が自分の番号かどうかを確認した。十度見くらいはしたと思う。
いやぁ、そんなことをふと思い出したりしてみたよ。
そうだな、これは・・・うん、「どんな状況でも、う〇こはしたくなる」という話だ。そういうことで。
それでは、ばいちゃ☆