サディの心象スケッチll:よだかの星
ある機械の小窓を覗きながら思う。(小窓を覗きながら操作をする機材があるのだ)
夜九時をまわって作業をしていると、自分がとても頑張っているような気分になった。
その実、ひとえに自分自身の効率の悪さなんだけど。
もっと自己管理をして、均等に時間当たりの仕事を分配できればいいのだけれど。その不備を棚にあげて「自分は頑張っている」だなんて、ちゃんちゃらおかしい。自分自身を叱る。
院生室へ戻る。
部屋はまだ明るかった。明るいどころか、先輩たちが仕事をしていた。こんな遅い時間まで・・・。
技工室へ行く。
すると今度は矯正科の同期が、げっそりとした表情で作業に勤しんでいた。
私が「いつもこんなに遅いの?」と聴くと、同期は「今日はまだ早い方」と悲しそうな顔をした。
廊下を歩く。
今度は口腔外科の同期。いつもは前向きな奴も「忙しすぎる」とげっそりしていた。そうだな、こんな時間帯だというのに、今日は久しぶりに同期とよく合う日だ。そして、皆、ひどく疲れ切っている様子だった。
同期がこんなに頑張っている。だから、自分ももっと頑張らなければいけないはずなのに。
こうして人工歯を並べていると、研修医のときを思い出す。去年の今頃。こうやって、毎日毎日、技工室の椅子に座って、夜遅くまでやっていた。日付をこえたこともあった。あの時あって、今は無いものはないか。自分は大丈夫だろうか。不安定な疑問を自分に投げかける。「お前は自分の居心地の良いほうに流れていく」と、卒業のときに酔った先輩から言われた言葉が妙に思い出された。
ただ、私も多少は腕が上がったのか、なんとか終電前には仕事を終わらせることが出来た。そして、無事に帰路についたのであった。一方で、まだ矯正の同期は「これから」といった表情で机に座っていた。帰る素振りはなかった。「お疲れ様」と声をかけた。
私は頑張っているか。もっと頑張れるんじゃないのか。再び自分に投げかける。沈黙。別に答えは無くてよい。自問自答することが大事なのだと思う。問い続けることで、何かを確認しているのだ。
冬の夜空はぴんと透き通っていて、星が綺麗だ。だから、冬は好き。
今日は見事なまでに星が光って見えた。私は遠くで、ゆらゆらと燃えている星があることに気が付いた。
「・・・よだかの星か」
鳴き雪に耳を澄ましながら・・・家路を急いだ。
それでは、ばいちゃ☆
北大では今でも医局員がしっかり技工をしているのだと嬉しくなりました。今のつらさ、苦しさ、そして少しばかりの楽しさは一生の財産です。応援してます。がんばってください。