魔窟「奥野ビルディング」(2)
さて、引き続き「奥野ビルディング」の話
アパートメントとして建てられた奥野ビルは
現在ではギャラリーやショップ、事務所になっている
外観はレトロでも
そのほとんどの部屋は綺麗に改装されているとのこと
だが、このビルの一角には
「銀座奥野ビル306号室プロジェクト」
というアーティストなどの約10数名による
非営利団体によって
当時のままの姿を留めている部屋があるという
このビルのオーナーであり美容師だった
須田芳子さんが美容室を開いていた
三階の一角にある306号室
須田さんはビル完成後、間もなくして入居
1985年ころまで営業し
2008年に100歳で亡くなるまで
この部屋で暮らしておられたそうだ
こじんまりとしたお部屋
壁ははがれかけ、月日の移ろいを感じさせる
美容室であったことを忍ばせる
丸い鏡が壁に並んでいた
須田さんがこのビルの“最後の住居者”だったそうだ
美容室時代の写真が納められたアルバムも置いてあった
この部屋に居たプロジェクトの方から
地下に浴室だった名残があるから
そちらも是非と言われたので
階段を下りて地下まで行った
タイルがはられており、浴室だったことを忍ばせる
部屋は絵画が展示されていた
奥野ビルは
古いけれども、美しかった
入居者の人々によって
綺麗に、大切に使われているようだ
なんだか良い匂いがした
発展と進歩の中で
忘れ去られてしまったものが
都会の真ん中にぽっかりと残されている場所
「奥野ビル」はそういうところなのかもしれない
いつまでも無くならないでほしい