俺はタクランケ!(歯学院生の日常)

ハロー、ハロー聞こえますか?
こちら太陽系第三惑星地球・・・。
あなたの世界とちょっとよく似たこっちの世界。
そっちがこっちで、こっちがそっちのパラレルワールド。
平行と交錯、現実と虚構。
ここは、それらの混沌から滴り落ちた、雨粒のようなブログ。
そちらの地球のお天気はいかがですか?

<< December 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>

<< 歯科医が題材の作品エトセトラ | TOP | ふしぎな青年 >>

2017.07.08 Saturday

孤独の古本

0

     ずっと探している本がある。

     それは、戦時中に出版された「歯と民族文化」という本だ。学生の時に修羅大の図書館で見つけて以来、どうにかして自分のものにしたいと思うようになった。ちなみに、学生時代にこの本を読んだ感想をブログに一部まとめてある。

    【関連記事1】戦時下の歯科(1) 勝敗は歯ブラシが握る?!

    【関連記事2】戦時下の歯科(2) あなたは後者?わたしは前者!

     一度、恩師の小林先生が退官されるとき、教授室の片付けをしていて保存状態の良い「歯と民族文化」が出てきたことがあった。小林先生は「片付けを手伝ってくれたお礼だから、なんでも好きな本をあげる」と言っていたので、これはチャンスだ!と思い、興奮気味に「これください」とお願いしたのを今でもよく覚えている。小林先生は少し「しまった」という顔をした(ように見えた)。そして「それはあげられない」と言ったのだった。「どうしてもですか?」と食い下がったが駄目だった。それほど、貴重で面白い本だということだろう。

     

     それ以来、全国各地でそれっぽい古本屋や古書店を見かけると、店内をぐるりと見渡して、時には店員さんに聞いてみるようにしている。札幌に来てからも、それを続けていた。結論から言えば、結局「歯と民族文化」は見つかっていないのだが、色々と面白いこともわかったりしたので、今日はそれをここにまとめてみたいと思う。

     

     

     

    第1話 雪大北13条門前の古本屋

     通学路にある古本屋。こげ茶色した表紙に旧字で印刷された題名が本棚に並んでいるだけで痺れる。あの昔の本の独特の字の形状はいったい何なんだろう。明朝体とも違う、あの形。それがたまらなく好き。

     通学路にあるので、早く帰れたときなどに、ふらっと立ち寄ることが多い。総合大学の近くにあるだけあって、様々な分野ごとに本棚がわけられているのだが、ここではきちんと「歯科」の本棚がある。ただ、「歯科」の棚に古書は殆どない。他の分野の棚には、豊富にあるのに。やはり分野としてマニアックなんだな、歯科の古書って。そう思うと、修羅大の図書館って本当に貴重な環境だったんだな。離れてみて初めてわかった。

     ちょっと諦めないで、戦争関係の本棚も眺める。香ばしいタイトルが立ち並んで、何時間でもいられそうだった。

     店員さんに尋ねてみようとしたが、なんだかお喋りしていた。「あの本は…」「あれは貴重で…」と文学史にまつわる古書についての話しのようだった。話の腰を折るのも気が引けたので、尋ねるのはまた今度にしようと思った。

     

     

     

    第2話 札幌の繁華街の中にある古書店

     ネオンがきらびやかに光る繁華街の中に、一際怪しい存在感を放つ古書店があった。古本が所せましと平積みにされていた。日に焼けた古本たちが年輪の様に重なり合いながら、地層のような風情を放っていた。古本の渓谷を蟹歩きで進むと、本の壁の向こうから声が聴こえてきた。

    「何かお探しですか?」

     典型的な老人様願望。歯なんぞ昔どこかに置いてきてしまったような。古本のような質感の店主だった。私はこのとき、まずは自分でじっくり見てみたかったのだが、声をかけられたのであれば仕方がない。「山崎博士が書いた、戦時中に出版された歯と民族文化という本を探しています」と尋ねると、少し調べて「それは無いみたい」と申し訳なさそうに言われた。

     「戦時中は紙が貴重だったから、その時代の本というのは基本的に貴重なの。さらに歯の話しとなると、そういった専門書はさらに希少なものなの。だから、もし今後、どこかで見つけたら、多少の値段はしても、どうしても欲しいのであればそれが最後のチャンスだと思って買うべきですよ。」

     なるほど、私が普通に大学の図書館で読んでいた本は、本当は非常に貴重なものだったのか。こりゃ、思った以上に見つからなそうだ。

     饒舌になった店主はその後も語り続けた。「最近の若い人は話しをしないから。最近の若い人は話が咬み合わなくていけない。話しは咬み合わせないと。ほら、歯科も咬み合わせが大切でしょ。なんでも咬み合わせるのが大切なんですよ。紙だけにね。」

     私は話しの切れ目を見逃さなかった。愛想笑いを放り投げて、急いで店を出た。嗚呼、本棚のラインナップをゆっくりみておきたかった・・・けれど、もうここには行かないと思う。

     

     

     

    第3話 雪大南門の近くにある古本屋

     本当に雪大の近くには古本屋が沢山ある。このお店も非常に雰囲気がよかった。今日はここに立ち寄った。古本屋特有のちょっとほこり臭い感じ。平積みにされている本が通路に置かれていたりするが、十分な広さが確保されていて、本棚にも綺麗に古本が整理整頓されていた。

     ただ、歯科の分野の棚がなかった。哲学や思想、歴史や文学、法学や美術といった棚が充実していた。私は歴史や戦争に関する棚を重点的に探してみることにした。様々な戦記物が並んでいるのを、ひとつひとつ手に取って読んでみたり。とても楽しかったが、残念ながら「歯と民族文化」は見つからなかった。

     店員さんに尋ねてみることにした。「歯と民族文化」という本を探しているというと、わかりましたと言ってパソコンをカタカタし始めた。どうやら、お店で扱っている蔵書はすべてデータベース化されているようだ。すごい。

     「歯と民族文化、歯はこの歯です」と、自分の歯を指さしながら言うと「あ、その歯ですか!」とびっくりされた。じゃあ、どの「は」だと思ったんだろう。「多分、専門的な分野の本だから『歯と』だけで出ると思うよ」と店員さん同士の話しが耳に入って来た。やっぱり専門書は希少なのか。

    「どうやら、ないみたいです」

     私は「やっぱりか・・・」と少し落胆した。

     

     だが、今日訪れたこのお店で、私はちょっと面白い本と出会った。

     出会ったというか、再会と言った方が良いかも。この本の著者は、友達のお爺ちゃん。私たちが高校二年生のときに、放送部で戦争ドキュメンタリーを製作した際、インタビューを受けていただいたのだ。このときの非常に貴重なお話しは今でも鮮明によく覚えている。その取材のとき、お話しをしてくださるだけではなく、自らの戦争体験をまとめたこの本を貸してくださったのだ。

     思いもよらぬ思い出の本ともいえる著作との再会に私はなんだか嬉しくなって、すぐにレジに持って行った。あの時お話をお聞きしたお爺ちゃんは、元気だろうか。友達とも、高校を卒業して以来、殆ど会っていない。友達も元気だろうか。

     

     「歯と民族文化」は見つからなかったけれども、不思議な再会を果たすことができた。今日の古本屋めぐりはラッキーだった。いつもこうなるとは限らない。けれども、時たまこんなこともあるから、やっぱり古本屋めぐりはやめられない。

     今後も「歯と民族文化」は、腰を据えて探していきたいと思う。ただ、この苦労を買っていただいて、小林先生、どうにか「歯と民族文化」をお譲りしていただけないだろうか。小林先生はこのブログを絶対見ていないので、ここでこう書いたって無駄なんだけど。今度お会いすることがあれば、またお願いしてみようかしら。

     

     それでは、ばいちゃ☆

    にほんブログ村 病気ブログ 歯科医へ
    にほんブログ村


    コメント

    http://www.hm.aitai.ne.jp/~gensen/sub184.htm の 22 で手に入らぬだろうか?
    2017/07/10 9:29 AM by オッサー
    >オッサー先生
    こここ!これは!これはすごいサイトを教えていただきました!早速メールしました!ありがとうございます!
    2017/07/13 10:58 PM by サディ

    コメントする









    ▲top