噂の秘湯、千歳の「祝梅温泉」に行ってきたよ!
北海道の空の玄関口、新千歳空港からほど近く・・・と言っても、車で人気のないところまで移動しなければいけないんだけど、そこに「祝梅温泉」はあった。
「祝梅温泉」は知る人ぞ知る隠れスポット。ネットではディープ系とか廃墟系とか言われている。ほら、上の写真でも、ちっちゃく写っているでしょ、目印が!
近づいてみると、想像以上のサイズにちょっと驚いた。これが祝梅温泉の目印である、巨大なボウリングのピンだ。
いろんなサイトで画像は見ていたけれども、いざ来てみると、なんだか異様な雰囲気でとても怖かった。ネットの情報がなかったら、この先に温泉があるなんて決して思わないし、思えない。すでに撮れ高充分な気もするけれど、せっかくここまで来たんだから入浴しなきゃ。
これらの無造作に積み上げられた廃材たちは温泉を沸かすための燃料なのだという。聞きしに勝る風景に「ほぉ〜」とため息を漏らしながら、私はシャッターを切った。
そうして写真を撮っていると、どこからともなく現れたのが・・・
犬!
ここに来るとわんちゃんがお出迎えしてくれると聞いていたけれども、本当にとことこやってきた。私の方を見てワンワン吠えるので、私は笑いながら、犬を指さして「犬!」と呼びかけた。すると犬はぷいっとそっぽを向いてしまった。
桜の花びらがひらひらと舞っていたのが、一層ミステリアスな雰囲気を醸しているように思えた。
民家みたいな祝梅温泉。常連客っぽいお爺さんとすれ違った。結構リピーターというか、地元住民からは圧倒的な支持を受けているみたい。前情報によると「とにかくお湯がいい」とのこと。ここ祝梅温泉は一回焼失したのに、また復活したんだから。自ずと期待が高まった。
意を決して入っていくと、テレビをつけたままで新聞を読んでいるおじさんがいた。私の方に気が付くと「いらっしゃい」と、のっそりと立ち上がり、受付でレジスターを打ち込んだ。入浴料は350円。受付のところには回数券も売っていた。
自販機もあって、コインロッカーもあった。あんまり褒め言葉じゃないけれども、小綺麗だ。入り口のインパクトが強烈だったから、もっともっと廃屋みたいなのを想像していた分、「なんだ、結構普通じゃないか」とちょっとだけ肩すかしを喰らった気分だった。
しかし、脱衣所へ入った瞬間、「意外と普通」と結論付けるのは早かったと自分の浅はかさを痛感した。
全然!
普通じゃない!
圧倒的手作り感!すごい!なんだかおばあちゃんの家の匂いがした。脱衣所の棚の一画は常連さんの物置になっていた。
はやる気持ちを抑えながら、きちんと服を脱ぎ、生まれたままの姿で浴室への階段を下った。
戸を開けると、もわっと立ち込めた湯気が私を襲った。瞬く間にメガネが曇った。結露した雫が天井のトタン板にいっぱいに張り付いていた。
「ぬるい」という噂があったが、どうも時間帯によって炊き具合があるらしい。私が入ったときは、ちょうどよい湯加減だった。お湯に抱かれた私はゆったりといい気分になった。そこには静寂があった。ここにはずっと入っていたくなるような不思議な魅力があった。
もしここに知らないおじさんが入ってきたとしても、きっとおしゃべりしてしまうだろう。そんな距離感というか、ここのお湯には心の緊張をほぐす作用があるように思えた。大学院に入ってから、色々とそれなりに忙しい日々を送ってきた私も、公私の様々な悩みなども忘れ、ぽっかりと頭の中を真っ白にすることができた。
私はなんだか嬉しくなった。湯から上がり、体を拭いて、また服を着た。そして脱衣所を出ようと、ドアノブに手をかけたとき。
「残念!また来てね!」
なんでこのプレートをチョイスしたんだろう。でも「残念!また来てね」という一見間抜けなような文言が、この温泉にはぴったりなのかもしれない。
残念!また来るよ!
それでは、ばいちゃ☆