俺はタクランケ!(歯学院生の日常)

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2017.01.17 Tuesday

雪大病院の技工部研修で、歯科と歯科技工士の将来を考える!

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     今日は雪大病院の生体技工部研修だった。

     1補綴である私は毎日のように技工物を依頼しに行ったり受け取りに行ったり。時には医局の日程表を私に行ったりと何かと関わりのある生体技工部。ただの「技工部」ではなく、その頭に「生体」がつくのは、大学病院の医科と歯科が統合した際に、何か医科側にもアプローチできることがあるかもしれないということらしい。その名の通り、歯科技工以外にもエピテーゼ(顎顔面補綴)にも積極的に取り組んでいるとのことだった。

     さて、今日の研修では、雪大病院の生体技工部のお仕事や仕組み、昨今の歯科技工技術について、またエピテーゼについて。さらには現代社会がかかえる歯科技工士にまつわる社会問題のことまで歯科技工士さんが熱く語ってくれた。

     

    <進みゆくデジタル技術!>

     雪大病院の生体技工部には5〜6人の技工士さんがいる。これは技工士さん曰く、厚労省が指し示す大学病院ひとつあたりの理想的な技工士の人数なのだという。しかし、大学の法人化にともない附属病院も収益をあげなくてはならなくなってしまった現在、人件費の削減ということで技工士の数を減らしているところがほとんどなのだという。「ちゃんと6人でやっているところは、雪大くらいです。あとは、医科歯科とかかな?」と技工士さん。

     生体技工部はとても綺麗だった。この研修はたまたまコジマ君も一緒で、技工士さんたちの作業風景を見ながら「あのバキューム、俺たちの医員技工室のよりも吸引力ありそうでいいなぁ」とか小声で話したりした。

     技工士さんの話しはまず最初に歯科技工の最新技術についてだった。現在、歯科補綴という分野は、いわゆる金属の被せ物や義歯を製作する際に、型取り(印象)を採って、模型を作ってそのうえで作業をして、完成した物を患者さんの口の中に入れるという段取りを踏む。

     しかし、これが光学印象と呼ばれる技術によって、スキャナーのようなもので患者の口腔内をデジタルデータ化して、コンピュータを駆使して補綴物の形状を入力して、3Dプリンターなどの技術で削り出すことができるようになるという。現段階では、コンピュータの価格が高いため臨床現場で広く応用されているわけではないが「もしかするとあと5年もすると」そういう時代になるかもしれないのだという。すご。

     「でも、光学印象って、チェアサイドでのドクターの負担が大きくなりますよ」と技工士さん。もしかすると、あと数年もしないうちに、スキャナーを片手に患者さんの口腔内をデータ化して、パソコンとにらめっこしながら技工士さんに情報を送信する時代がくるのかもしれない。

     「いま訓練している印象採得もしなくなる日が来るかもしれない」

     私はそれはそれで寂しいような気がした。

     

     

     

    <エピテーゼ(顎顔面補綴)と歯科技工>

     生体技工部で取り組んでいるエピテーゼを見せてもらった。コジマ君の出身である敷大もある先生が顎顔面補綴をメインに取り組んでいる方がいるらしい。私は修羅大の講義で「エピテーゼはほとんど形成外科の範疇」と先生が言っていたような気がしたが、歯科でもしっかりと取り組んでいる人たちがいることを今日知った。

     私たちは生体技工部で実際に作られている鼻や耳、義眼などを見せてもらった。義手義足などは義肢装具士という人たちが厚労省の認可を受けて取り組んでいるらしいが、鼻や耳、目といった顎顔面の領域は別段これといった資格は必要ないのだという。極論を言うと「そこらへんにいる兄ちゃんを連れてきて、お、お前やってみっか、と言って机に座らせてやらせてもいい」らしい。

     ただ、風当たりがまったくないわけではなく、耳のエピテーゼに関することを学会で発表すれば、形成外科のドクターたちから「偽物をつくってどうする!」と言われたり。義肢装具士などからは「それは歯科技工士の仕事の範疇じゃない」と反発されたりもするらしい。

     ただ、義肢装具士といった人たちも顎顔面補綴に手を出してみたり、逆に歯科技工士が義肢の製作をすることもできるし、場合にもよるだろうけれども取り扱う領域が重なっていて、線引きが微妙だというのが現状なんだとか。

     私は「こういったエピテーゼの製作に、歯科技工のノウハウは用いられているのですか?」と質問をした。

     すると技工士さんが「歯科の材料は非常に汎用性が高いんですよ」と言った。歯科材料というのは使いやすいうえに、医療認可が下りており、生体親和性も高いため、医科のドクターが歯科材料をわざわざ購入していくこともあるのだという。「トレーレジンを買っていく医師とかもいるんですよ」と言われて、なんだか不思議なような気がして面白くなった。

     

     

     

    <歯科技工士がいなくなる?!>

     「これ、ここをしっかり聴いておいていただきたい」と技工士さんがパソコンのボタンをカチっと押すと、「歯科技工士がいなくなる?!」と大きくかかれたスライドが投影された。どこかの歯科医師会か歯科技工士会が作成したパンフレットのひとページのようだった。

     歯科技工士の低賃金長時間労働は社会問題になっていることは歯科医療従事者であれば誰もが知っていることだ。金属などの材料費は高騰してるのに、診療報酬は一律で変動しないため、そのしわ寄せが歯科技工士にいっているのだという。

     学生時代、講義でもとりあげられたことがあった(確か2補綴の講義だったような・・・)。私の記憶が確かであればクローズアプ現代の録画の一部を見たような覚えがある。技工士をやめてしまった男性が「技工士に戻りたいが、技工士ではやっていけない」と悲痛な思いを口にしているシーンが印象的だった。国会での議題であがっている場面も映し出された。「国政の場で討論されるほどの問題なのか!」と学生時分の私は驚いたが、別段状況が改善しているようには思えないので、どうも国政においてもあまり関心事としては扱われていないような気配である。

     ただ、歯科技工士にまつわる問題は、日本の歯科医療を揺るがす由々しき問題であり、かつ早急に対策を講じなければならない。

     さて、先ほどから「歯科技工士にまつわる問題」と言っているが、いったい何がどう問題となっているのか。それは具体的なデータをみるとわかりやすい。まず離職率が約80%。技工学校の閉校が相次ぎ、2年制の技工学校のほとんどが定員割れ。歯科技工の将来を担うはずの若者(25歳以下)の割合が6%。このままでは映し出されたパンフレットの言っている通り「歯科技工士がいなくなる」かもしれない。技工士さんが「どうしますか?つくってくれる人がいなくなりますよ!」と言っていた。

     「昔は診療後に歯科医師も技工をしていたんです。それでご飯が食べられた時代はよかったんです。けれども、今は患者の数はこなさなくてはいけないし、経営のことも考えなければいけない。どうしても、歯科技工士は必要になってくるんです。」

     また、現在、技工学校の学生の7割が女性になっているとのこと。技工士さんの話しだと、最近の技工所はしっかりと託児所なども設けて女性が働ける環境作りにも取り組んでいるところが多いのだという。

     「そうやって女性の技工士が離れないようにすることが、今後、とても大切なことだと思います」

     最後に、技工士長の方がスライドを見ながら「歯科医師の先生方にも、今一度、歯科技工に対する理解を深めていただけたら・・・と思います」「是非とも生体技工部に足を運んでいただいて話を聴いていただきたい」と言った。

     

     もしかすると、歯科技工士がいなくなってしまう日が来るかもしれない。やはり、歯科医師もしっかり技工が出来るようにならないといけないだろう。しばしば、分業を徹底させて歯科医師が技工をする必要はないとする論調も見受けられるが、やはり今こそ必要なのではないだろうか?歯科技工士に的確な指示を出すことができる歯科医師になるために、歯科技工士と信頼関係を築くことができる歯科医師になるために。そして、もしかしたら歯科医師自身が技工をこなさなければいけない時代がやってくるかもしれないので、そんな時代がやってきたときのためにも。

     

     雪大に居るうちに、1補綴ならびに技工部のお力を頂戴して、しっかりと勉強していきたいと思う。「いい印象、いい形成でよろしくお願いします」という技工士さんの言葉に、研修医の何とも言えない表情の笑いが起こったところで技工部研修は終わった。

     

     本当に楽しい研修だった。それでは、ばいちゃ☆

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