おじいちゃんの煙草
先日、美瑛に行ったときのことである。
私たちは青い池に行ったあと、色々なビュースポットを回った。
まず最初に「ケンとメリーの木」。
私はまったく世代ではないのだが、ケンとメリーの存在は自動車部でもあった親友みっちーが教えてくれた。私は財津和夫の大ファンなのだが、財津さんが「I LOVE JAPAN 〜愛のスカイライン」という曲を歌っていることを偶然知り、それがきっかけで一連の「ケンとメリー」のCMを見ることになったのだ。
なんだろうな、この素敵さたるや。まったく古さを感じさせないCM。自動車のことがわからない私でもスカイラインは素敵な自動車なんだということがインプットされてしまった。
実際にCMでの「ケンとメリーの木」はこちら。
「風って言葉がわかるんだろうか」
いやぁ、カッコイイ。そりゃ、この当時を知っている人は、こぞって此処に来るわ。
ただ、ケンとメリーの木もそろそろ寿命なんだとか。
持ち主の但し書き。ケンとメリーの「ケ」の字もない・・・と思いきや、木の向かいには「ペンション ケンとメリー」。確かに、ロマンチックで開放感のある景色だよね。
私たちは案内表示に沿って、続いて「セブンスターの木」に行くことにした。母は「ここまで来たら、丘という丘、木という木を見てから帰るわよ!」とスイッチが入っていた。父は風邪声でBUZZの「ケンとメリー」を口ずさんでいた。
そしてこちらが「セブンスターの木」。
冬を越したばかりだから、元気がない。
「お父さんが昔吸ってた煙草ってセブンスターだっけ?」と聴くと「俺はマルボロ」と父。そこに母が「セブンスターが好きだったのはお爺ちゃんよ」と言った。私は母方の祖父、おじいちゃんが大好きだった。おじいちゃんはいっつも美味しそうに煙草を吸っていた。小さい頃の私は、おじいちゃんがあまりにもおいしそうに煙草を飲んでいるので、「僕も、僕も」とよくせがんでいたものだった。おじいちゃんは私が高校生の時に死んでしまった。
何処までも続く青空に、静かな隆線を描く山並み。これぞ北海道という景色を、思い出と共に走り抜ける。
「セブンスターの木」の次に向かったのは「マイルドセブンの丘」だ。
おじいちゃんは「セブンスター」が好きだったけれど、おばあちゃんから止められて普段は「マイルドセブン」を吸っていたらしい。「セブンスター」の方が重かったから、軽い「マイルドセブン」を吸いなさいということだったらしい。
でも、娘は父の味方で、母なんかはよくこっそり頼まれて「セブンスター」を買いに行っていたのだという。そしておじいちゃんは「マイルドセブン」の中に「セブンスター」を数本紛れ込ませておいて、まるでくじ引きのような感覚で「セブンスター」を引き当てて吸うのを楽しみにしていたのだという。「好きな煙草くらい、好きに飲ませてあげればよかったのに」と思わないでもないが、そういう風に、生活の中に少しでも楽しみを見出そうとするところがおじいちゃんの素敵なところだったなぁ、と思うわけで。
煙草、煙草。煙草を見ると、今でもおじいちゃんのこと思い出す。
父もすっかり煙草をやめた。母が「サディが小さい頃に…」と思い出話をはじめた。私は父から頼まれて煙草を買いに行って、煙草の入った袋をぶんぶん振り回しながら歩いて、煙草をなくして大泣きしたことがあるというのだ。小さい頃から、私はどうもそういうところがある。それにしても、煙草がかくも生活に寄り添っていた時期がかつてあっただなんて、不思議な感じである。時代かな。強がって吸ってみてもいいけれど、結局吸わずに大人になった。
おじいちゃん!
僕は元気だよ〜!
それでは、ばいちゃ☆