俺はタクランケ!X

ハロー、ハロー聞こえますか?
こちら太陽系第三惑星地球・・・。
あなたの世界とちょっとよく似たこっちの世界。
そっちがこっちで、こっちがそっちのパラレルワールド。
平行と交錯、現実と虚構。
ここは、それらの混沌から滴り落ちた、雨粒のようなブログ。
そちらの地球のお天気はいかがですか?

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2018.05.06 Sunday

さようなら、ゴールデンウィーク

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     ゴールデンウィーク最終日は生憎の雨だった。

     私はというと、精進歯科の日だった。そう、精進歯科。しかし、私は電車に揺られながら「もしかすると今日は休診かもしれない」と思ってみたりした。いや、そんなはずはないんだけど、もしかすると今日が仕事というのは私の勘違いで、昨日までのように今日もお休みだったかもしれない。

     

     そんな淡い期待(?)を胸に精進歯科の入っているスーパーに入ると、目の前に院長が。

     だよね。

     

     精進歯科に入ると、受付の方が「今日は如月先生だったんですね」と言った。そういえば今月のバイトのシフト(私だけでなく先輩が行く日もあるため)を伝えていなかった。

     

    「今日が如月先生でよかった・・・」

     

     よくわからないけれど、喜ばれてよかった。

     

     

     

     今日は最終日とはいえ連休でお休みの日。しかも雨が降っているせいか、次から次へとキャンセルが相次いだ。ひどいときは、その時間の枠が全部キャンセルになったり。キャンセルの電話があるのはまだ良いとして、無断キャンセルも多かった。なんだろうな、キャンセルする人って。

     

     キャンセルだらけの予約表を見ながら、私はふと学生時代に受けた講義のことを思い出した。

     細かいところまでは覚えていないけれど、先生からシナリオを渡されて、それについてディスカッションするという講義だった。そのシナリオというのが「ある学生が歯科医院にかかっていたのだが、ある日無断キャンセルしてしまったことを、その歯科医院の先生から怒られた」というものだったような。大筋はそんな感じだったと思う。そのシナリオに対する皆の意見は「歯科医師は患者である学生を怒ってはいけない」だった。私は非常に憤慨した。「どう考えたって無断キャンセルした学生が悪いだろう」と意見したが、圧倒的多数派によって私の意見は飲み込まれてしまった。私の意見は変わっていない。あのときの皆の意見は、今思い返してもオカシイと思う。腹が立ってきた。あのときの皆は、歯科医師になった今でも、同じ意見なんだろうか。ぜひとも聞いてみたいものである。

     

     お昼休み。精進歯科の日はお昼ご飯を院長と一緒に、近所の喫茶ブロンディで食べる。しかし、今日、ブロンディはゴールデンウィーク休みだった。精進歯科の周りはどこもかしこもお休みだった。そういえば世間はゴールデンウィークだったということを、まざまざと感じさせられた。

     ちなみに、私はブロンディに行くとカツカレーと決めていた。私はカツカレーが大好きだし、ブロンディのカツカレーは美味しかった。毎週のようにカツカレーを食べる私。院長は必ず「彼と同じものを」と言うので、院長も毎週のようにカツカレーを食べている。ブロンディのママさんから「いつもカツカレーじゃない?大丈夫?」と言われることもあるけれども、それでもカツカレー。私はある種の義務感を持って「カツカレー」を頼んでいた。金曜カレーならぬ、日曜カレー。

     その連続カツカレー記録が今日、ゴールデンウィークという障壁によって途絶えてしまった。1年で終わり。残念である。いつもと違うお店で、私が食べたものは・・・カルボナーラだった。

     

     

     

     ・・・キャンセルだらけだったということもあり、今日は早く終わった。

     院長が私に言った。

    「いいよ」

     

     精進歯科は夜七時までだが、早く終わると早く帰してくれる。なるほど、今日はそういう日なわけね。私はそそくさと着替えて帰り支度を整えた。私の着替え場所は院長室だ。ジャンバーに手をかけると、院長が言った。

     

    「そういえば、今、1補綴に大学院生って何人いるの?」

     

     内心「あれ、帰っていいって言ってくれた割には帰してくれないなぁ・・・」と思いながらも、別に用事もなかったし、私は院長とおしゃべりするのは好きだったので、別に気に留めなかった。私と院長のお喋りは弾んだ。

     そうして話していると、まだ処置中だったスタッフさんが院長に「確認をお願いします」とやって来た。院長がそっちに行ったので、その隙に・・と言うと表現が悪いけれども、カバンを背負って院長室を出た。

     

     いつもの通り、スタッフさんたちに「お先に失礼しま〜す」と声をかけながら診療室を出ようとすると、どうもスタッフさんたちの様子がおかしい。

     

     

     口には出さないけれど、どう見ても「帰る!?帰られちゃ困る!」という表情をしていた。私は「え、帰っちゃダメなんですか?」と聴くと、えらく困った様子であった。「だって院長がいいよって・・・」と言うと、さらに困ってしまった。

     

    「い、院長に確認してきます」

     

     と、スタッフさんが小走りで院長のところへ。すると「相談したいことがあるので、もう少し残ってほしい」とのことだった。相談・・・。はて、なんだろう。院長が私に?そんな改まって?

     

     ま、まさか・・・。

    「如月くん、クビ」

    とかって、解雇を言い渡されるんじゃないだろうか。

     怖ぇー!!

     

     私がこんな風に勝手に戦々恐々としているなんて知らない院長と、再び院長室で二人きり。

    「6月の検診のお手伝いを探しているの」

     

    ほっ。

     

     よかった。杞憂で。でも、わざわざ今?帰る私を呼び止めて?今月は毎週来るのに?ううん、何かある・・・ような気がする。でも、こういうときに「何かあるかも」と勘繰って何もないというのがサディクオリティ。

     あんまり考えないようにしよう・・・と思いながら院長と話していると、またもや院長室にスタッフさん。

    「準備ができました」

     

     院長は「よし」と言った。そして「準備・・・?」と訝し気な表情を浮かべている私に院長室から出るように促した。状況が飲み込めていないまま院長室を出ると、診療室は電気が消されて真っ暗になっていた。

     

     ぱっと顔を上げると、

    バースデーケーキ!

     

     院長が「せーの」と号令をかけると、スタッフさんたちからハッピーバースデーの大合唱。

    「如月先生、おめでとうございます!」

     

     院長が「一か月近く経っちゃったけど、なかなか祝えるタイミングが無くてね、お誕生日おめでとう!」と言ってくれた。そうだったのか。なるほど、今朝、受付さんが「如月先生でよかった」と言ったのも、スタッフさんたちが私が帰ろうとするのを困った顔で止めたのも、院長がなかなか帰してくれないのも、すべてつながった!

     そっかぁ、精進歯科の皆さんで、私の誕生日をお祝いしてくれようとしていたのかぁ。スタッフさんがケーキを切り分けてくれた。「お誕生日おめでとうございます」と書かれたチョコレートのプレートが私のお皿の上に乗った。

     

     私はあんまり祝われ慣れていないので、ただただにやにやしているしかなかった。

     しかも花まで・・・!

     

     こんな風に祝っていただけるなんて・・・感激!

     精進歯科の皆さんの温かさに感謝しながら、如月サディ28歳、改めてがんばるゾ!!と、決意を新たにした次第である。

     

     

     

     それでは、ばいちゃ☆

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