俺はタクランケ!X

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2017.10.05 Thursday

大陸の歯科事情

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     今、雪大1補綴の院生室は中国からの留学生で話題が持ちきりだ。

     

     馬。「ば」と呼んでね。

     

     今、院生室は彼を中心にまわっている。彼から聞く歯科の中国事情は面白い。今日も私とコジマと馬の三人で、中国語と日本語と英語を闇鍋で煮詰めたような会話で、色々な話をした。

     一生懸命話すコジマが健気。お互いに情報を補完し合いながら馬との会話をすすめた。ちなみに「カリエス(caries)」が通じなかった。コジマがずっと「カリエス?キャリエス?キャァリエェス?」と発音を変えてみたりしたけど通じなかった。「decay」でやっと通じた。あれ、cariesって何語?(やっぱり英語でした)

     

     それを見守る、フランク先輩。

     時々、まったく理解できない部分を、さらっと翻訳してくれた。かっちょいい。

     

     また、馬は私と同じ研究班に配属されるらしいので、一緒に磯兵衛さんから説明を受けたりした。

     わからない部分は筆談で。科学の言葉は世界共通と思いきや、思いがけず伝わらない言葉もあって、面白かった。例えば「イオン」。馬はずっと「いおん?」とエクスクラメーションマークを具現化したような表情を浮かべていたが、途中ではっとしたような表情を浮かべて、紙にすらすらと「ion」と書き「ァイオン」と発音した。磯兵衛さんと私は「へー、あいおん!」と復唱したなんて一幕もあった。

     

     

     

     さて、そんな馬との交流の中で、せっかく歯科の中国事情を聴いたので、ここに書き連ねていきたい。ただ、前述したように私たちが話しているのは言わば「闇鍋語」。細かい部分は違っているかもしれないので、まぁ、ここは話半分に読んでいただきたい。

     

     中国には医学部と口腔医学部があるらしい。口腔医学部が日本でいうところの歯学部ということで間違いないようだった。中国では歯科医師の数が絶対的に不足しており、歯科医師はとても人気の職業なのだという。また、中国には私立の歯学部は存在せず、すべて国立。そして、どの歯学部も入学が難しいんだって。中国の大学の序列を簡単に教えてくれたが、かなり上位の方にあった。

     

     中国では歯学部の数が少なくて歯科医師が不足しているという話は聞いたことがあったが、また別の理由もあるようだった。馬曰く、2000年あたりで「医院革命(馬の筆談ママ)」が起こり、患者の権利意識が増幅して医師は常に危険にさらされているのだという。度々、患者によって医師が殺害されるという事件がおこっているんだとか。それに比べて歯科医師はそういった危険性がないというのも、人気の理由のひとつらしい。

     

     また、中国での診療科の分け方も日本と全然違って面白かった。中国では、歯科の分野は正畸、修復、外科、内科の四つに分けられるのだという。正畸は矯正のことらしい。日本で「修復」というと、なんだか保存修復のイメージだけれど、中国だとこの「修復」こそが「補綴」を指すのだという。コジマと二人で修復を指さしながら「prosthodontics?」と確認したから間違いない。

     「外科」はいわゆる口腔外科。ただ、この「内科」は、歯内療法・歯周病・保存修復といった、日本でいう所の「保存歯科」のことを指すのだという。日本だと「内科」もしくは「口腔内科」というと、口腔外科からの派生というか、口腔粘膜疾患(例えば白板症や扁平苔癬など)を専門に扱う分野というイメージが強いが・・・。所変わって中国で「内科」というと保存を指すのか・・・と大変驚いた。

     ちなみに中国では矯正と補綴が人気があるのだという。それはなんだか嬉しかった。

     

     さらに、私たちは馬に色々たずねてみた。どうして雪大に来たのかも聞いてみた。馬は「研究」と即答した。中国だと学部教育が5年間で、その後、修士課程の大学院が3年。博士課程がさらに3年かかるのだという。日本だと学部のあとに修士課程飛び越して(飛び越してというか6年間の学部教育で修了したとみなされている)4年間の博士課程だもんね。

     

     質問は矢継ぎ早だ。

    「馬以外は卒業してどうしているの?」

     馬は一生懸命答えてくれた。

     

     どうやら中国では卒業が7月(だから馬はもう卒業はしているらしい)。そして国試が次の年に行われるのだという。実技試験が6月。ペーパー試験が8月。結果発表が10月あたりらしい。なるほど、中国では学部を卒業した後、一年近く空白期間が生じるわけか。

     けれども中国の歯科学生たちは卒業すると就職先で国試を受ける前からガンガン働きだすのだという。国試はもう受けたら受かるものらしい。本来、資格試験ってそうあるべきなんだろうけど、日本の現状からは考えられない状態だ。ということで、普通卒業すると国試に「合格見込み」の状態で、普通に歯科医師として働きだすのだという。

     そこで馬はその空白期間を就職で使うことなく、雪大に来て、来年度から雪大の大学院に進学するための準備期間に充てているのだという。なるほど、なるほど。

     

     馬は夢を語った。

     「将来は故郷で医院を開きたい」

     

     馬の故郷には歯科医院があまりないのだという。夢を持つって素晴らしいことだ。

     

     

     

     中国では中国の歯科医師免許を持つ者と一緒であれば、日本の免許しか持っていない私達でも診療することが出来るのだという。馬が「中国でやりたくなったら一緒にやりましょう」と笑っていった。コジマと私は満更でもない表情を浮かべた。

     

     だって、馬の話しを聴いていると、中国での方がぶっちゃけ収入がよさそうなんだもの。

     ちゃんとした言葉で言い換えれば、専ら歯科に限った話をすると中国の方が専門職への対価や価値感がきちんとしている印象を受けた。日本は保険制度のせいで、国の定めたルールで二束三文の価格で歯科治療を行わなければいけない。なんだ、これは、共産主義の中国よりも、日本のほうがよっぽど共産主義のような仕組みに押し込められているじゃないか!なんたること!

     

     歯科医師として、大陸進出。なんて魅力的な響きだろう!なんだか夢が膨らむ。

     私は「一緒にやりましょう」と勧めてくれた馬に「是非」と言いながらOKサインを反転させたジェスチャーをした。

     馬は「それはなんですか?」と聞いて来たので「ジャパニーズ、マネー、ジェスチャー」と説明した。

     

     

     

     また馬に要らぬことを教えてしまった。

     

     

     

     それでは、ばいちゃ☆

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